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2022.09.28

【Shock人インタビューvol.4】カクシンハン・スタジオ~横尾圭亮さん~

今回は文化芸術部門でご一緒しているシアターカンパニー・カクシンハンから 横尾圭亮さんにインタビューさせていただきました。

大学卒業後、ロシアの演劇大学・大学院へ進学。2019年帰国後は俳優及び俳優・演劇教育指導者としても活躍されている横尾さんに演劇の魅力やロシアでの学校生活についてお聞きしました!

Q.演劇を始めたきっかけ、俳優・演劇教育指導として生きていこうと思われたきっかけを教えてください。

私は「“生きている”もの」が好きです。
魅力的な人物や走っている馬や犬、昼寝をしている猫、飛んでいる鳥。
そして「命はない」ですが“生きているとしか言えない物”。
名作と呼ばれる音楽や絵画、もちろん舞台表現。そういったものに魅了されてきました。

だから「舞台上で役として生きる」芸術、ロシア・リアリズム演劇を始めることになったのか、あるいはこの流派のおかげで「生きているもの」をより敏感に感じ取るようになったのか、よく自分でもよく覚えてないのですが、「生きていたい」という想いから演劇を始めたのは確かだと思います。

人は時々「死んだ目をした人」とか「死んだ表現」とか言ったりするけれども、では何が「死んだもの」を「生きたもの」へとさせるのでしょう。実際私自身にも“生きている時”と“死んでいる時”がある。そして「どの時代にも生き続けているもの」もある。何が時の持つ風化の力にさえ抗うことができる“生きた”パワーとなりうるのでしょうか。もしかしたらこれらの“因子”は小さすぎて、細かすぎて見えないのかもしれません。
ですがこの“因子”は日々を生きる我々にとっても、演劇という芸術にとっても間違いなく大事なことであると確信しています。人が、俳優が一人一人必ず持っているはずの、しかしついつい忘れてしまいがちなその“因子”に辿り着きたいと思ったからこそ、俳優教育の道に進もうと決めたような気がします。

Q.大学卒業後に演劇を学びにロシアに留学されたとのことですが、なぜ留学しようと思われたのですか?

日本の大学で学んでいた頃、ロシアの先生が教鞭をとっていらっしゃった授業があり、現在スタジオや研究所で自分が教えている「演技術」や「ステージ・ムーブメント」などを学びました。刺激的な授業で、今まで自分が見聞きしてきたことや経験してきたこと全てをひっくり返されるような思いをしたことを今でも覚えています。
またその過程で知った、世界の俳優の演技のあり方や、さらには劇場の運営方法までにも革新を与えることになった「スタニスラフスキー・システム」と呼ばれる俳優教育システムの存在、それをベースに国が俳優や演出家を大学で育て上げているロシアという国の芸術に対する姿勢に興味を持ち、ぜひこの国で学びたいと思いました。

Q.留学先にロシアという国、または留学先の学校を選んだきっかけを教えてください。

留学先にロシアを選ぶ人そんなにいないだろうなという下らない自尊心も間違いなくありました(笑)とにかくあまり日本人同士で集まって馴れ合うようなことはしたくありませんでした。あと費用も他の国に行くよりも格段に安かった。
というぶっちゃけ話は置いておくとして(笑)、先ほども書きましたが、ロシアの人々の芸術に対する姿勢が自分にとって非常に魅力的でした。完成された合理的な教育システムがあるのに、日々変わり続けようとしている。表現が飼い慣らされていない。遊びがある。
後は大雑把なまでに情熱が強いからこそ徹底的に細部にこだわる姿勢。その心意気が自分には輝いて見えました。留学先の大学、大学院は直感で決めました。ですがこれらの学校で、かけがえのない友人達と先生方に出会うことができました。

Q.ロシアでの学校生活、授業の中で一番印象に残っている経験について教えてください。

印象に残っていないことなんてないかもしれません(笑)
それぐらいロシアの生活は日本とはかけ離れていました。社会も人もаттракционные (アトラクションみたい)で次に何が起きるのか読めない。即興的に対応して生きていかなきゃいけない毎日はとても刺激的でしたね。(というかヒヤヒヤ笑)寮生活は大変だったけれどとても楽しかった!長時間に及ぶ苛烈な稽古や授業の後、夜な夜な友達と演劇のことや芸術のこと、国のこと、人生のことを語り合った日々は宝物です。

Q.演劇の体験が日常生活と繋がった経験について教えてください。

日常生活でも舞台上でも、人は誰しも幾つもの「役」を担って生きているのだと身をもって“気付けた”時でしょうか。その点と点が繋がった時に「“つまらない人間”なんてこの世にはいないんだ。」と強く感じることができました。

Q.演じることの魅力はなんですか?

沢山ありますが、「自分の中心地」がどんどんはっきりとしてくることでしょうか。ある状況の中で「自分ならどうするか」考えて試すこと。はたまた自分とは全く異なる人物として行動してみたり、その行動の動機や意志、情熱だったりを考える。そういうプロセスの中で自分の中にある“他者”と出会うことができ、徐々にその“他者”が自分にとってより近い存在へと変わっていく。この作業はなんだか自分の中心地が広くなり、中心点がくっきりと見えるような気がしてくるのでとても楽しいです。

Q.この記事を読んでくれている方へ、メッセージをお願いします!

人間の身体は、無限の可能性を秘めています。そこには、もしかしたら我々の心の秘密を探る鍵が潜んでいるかもしれません。心と身体を繋いでいく演劇のトレーニング、“サイコ・フィジカトレーニング”を使って新たな自分の可能性に出会いに行きましょう!